出典: 量子暗号 『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版(Wikipedia)』 最終更新 2020年7月30日 (木) 08:57 UTC、URL: https://ja.wikipedia.org/ 量子暗号(りょうしあんごう、英: Quantum cryptography)とは、いくつかの種類があるものの、量子力学の性質を積極的に活用することで無限の計算能力と物理法則以外に制約を持たない攻撃者(イブと呼ばれる)から通信を守ることを目的とした技術を指す。主として、量子鍵配送、量子直接通信(Quantum Secure Direct Communication)、YK プロトコル、Y-00 プロトコル、量子公開鍵暗号などがあるが、量子鍵配送のことを指すことが多い。その実装の基礎が量子力学という物理学の基本法則に基づいていることと、量子公開鍵暗号を除き計算量的安全性でなく情報理論的安全性であることが特徴である。 なお、商用に広く用いられる公開鍵暗号は解読に計算時間が膨大にかかる計算量的安全であり、計算量には依存しない情報理論的安全な暗号ではない。また、混同されがちな暗号プロトコルに「ポスト量子暗号」(耐量子暗号, Quantum-Resistant Cryptography) があるが、これは量子計算機でも解読するのがおそらく難しいであろうと考えられているアルゴリズムにより実装されるソフトウェア暗号であって、上述の意味での量子暗号ではない。ポスト量子暗号は2024年の標準化を目指してNational Institute of Standards and Technology (NIST)により選定が進んでいる 。 [歴史] 量子鍵配送はステファン・ワイズナーの先駆的な研究により1970年に発見されていたが、後にチャールズ・ベネットとジル・ブラサールによって1984年に再発見された。このときに提案されたプロトコルがBB84である。提案された当初は非現実的であるとされたが、その後の実験技術の進歩とプロトコルの改良(誤り訂正及び安全性増幅)により、実現可能な技術とみなされるようになった。 上記の進展に触発され、量子直接通信、YK プロトコル、Y-00 プロトコル、量子公開鍵暗号などが考案された。 量子鍵配送プロトコル 最大の利点は「証明可能な安全性」を主張していることである。現在、主流となっている量子暗号は量子鍵配送、特に商用ではBB84であるが、それ以外にも多くのバリエーションが登場している。大別すると、(近似的) 単一光子に基づくもの(B92など)と、コヒーレント光、スクーズド光などの連続光を用いたものがある。いずれも量子状態が観測によって歪む性質を用いて、盗聴者に漏洩したであろう情報量を見積もり、その結果に応じて秘匿性増幅(参考: Leftover hash lemma) を用いて安全性の高い鍵を作るという原則は変わらない。 ・・・ |
同義語・類義語 | 関連語・その他 |
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QKD | Quantum |
Quantum key Distribution | kwɑ́ntəm |
kwɑ́ntəm kiː dìstribjúːʃən | クワゥンタゥム |
クワゥンタゥム・キー・ディストゥリビューシュン | クワンタム |
クワンタム・キー・ディストリビューション | [名詞] |
量子暗号通信 | 量子 |
・ | 量 |
Quantum cryptography | 数量 |
kwɑ́ntəm kriptɑ́grəfi | [形容詞] |
クワゥンタゥム・クリプトゥグラフィー | 量子の |
クワンタム・クリプトグラフィー | 量子学的な |
量子暗号 | ・ |
量子鍵配送 | key |
量子鍵配送プロトコル | kiː |
キー | |
[名詞] | |
鍵 | |
[形容詞] | |
重要な | |
・ | |
Distribution | |
dìstribjúːʃən | |
ディストゥリビューシュン | |
ディストリビューション | |
[名詞] | |
分配 | |
配布 | |
配給 | |
分散 | |
流通 | |
・ | |
Cryptography | |
kriptɑ́grəfi | |
クリプトゥグラフィー | |
クリプトグラフィー | |
[名詞] | |
符号化 | |
暗号法 | |
暗号学 | |
暗号化技術 | |
更新日:2022年 5月13日 |